事例1理由のない解任と不支給
ご相談者
このたび社長を理由もなく不当に解任され、役員退職慰労金も支払ってもらえません。全く納得ができません。これまでの退任取締役には全員、役員退職慰労金を支給してきましたが、私にだけ役員退職慰労金を支払わないのです。
弁護士から
本当に納得のいかない話だと思います。オーナーの身勝手としか言いようがありません。しかし、諦める必要はないと思います。
役員退職慰労金の請求に注力
役員退職慰労金を支払ってもらえない元役員の方へ
株主総会の決議の有無、役員退職慰労金規程、功績倍率等を踏まえ、交渉と裁判により役員退職慰労金の回収を目指します。
元日本最大の法律事務所出身
弁護士法人M&A総合法律事務所
代表弁護士土屋 勝裕

まずは、お電話又はご相談のお申込みのページからご連絡ください
役員退職慰労金は、「株主総会決議がない」「前例がない」「検討する」などの説明を理由に、会社から支払拒否されることが少なくありません。こんな理由で支払いを拒否されていませんか?
「株主総会決議がないから支払えない」
定款・内規・議事録・慣行の有無等により、法的請求が可能な場合があります。
「前例がないから払えない」
前例がなくても慣行・合意内容・取締役会決議等を根拠に請求できる場合があります。
「M&A・会社売却後に支払いを拒否された」
株式譲渡契約書・M&A合意書の内容をもとに、買主への請求を検討できます。
「役員退職慰労金規程・内規の存在が確認できない」
内規が書面化されていなくても、過去の支給実績や議事録等から立証できる場合があります。
以下のような状態に陥っている場合、「無視された役員退職慰労金は払ってもらえない」「塩漬けにされてしまってもどうしようもない」「もう支払ってもらえない」と受け止めていませんか。しかし、そのような前提で放置すると、証拠が散逸し、回収可能性が下がる局面が生じ得ます。そのように考えているのであれば、今すぐその考えを捨ててください。
役員退職慰労金の支払拒否は、会社の体質と支配構造に起因して繰り返し発生します。もっとも、同じ特徴は徹底回収の糸口にもなります。
支払拒否を放置すると
弁護士に依頼するとこう変わります
役員退職慰労金は回収できる金銭債権です。まずはご相談ください。
必要となれば最高裁判所まで戦い、
逆転判決を勝ち取る実力があります
2024年10月最高裁判所判決
株式買取業者を相手方とする事件において、最高裁判所で逆転判決を取得
2026年2月逆転判決
株式買取業者の行為を違法と認定する逆転判決を獲得
当事務所の基本方針
可及的に裁判ではない方法で解決します
裁判は時間・費用・心理的負担が大きく、ご依頼者の誰もが望まないものです。当事務所は裁判によらない解決を実現する豊富な経験と独自のノウハウを有しており、可及的に裁判によらない役員退職慰労金の徹底回収を目指します。
役員退職慰労金の徹底回収を交渉ベースで実現するのは、裁判でも勝ち切る実力があってこそ。会社が支払を拒否しても、最後まで諦めません。
役員退職慰労金を何度も何度も回収しています
「株主総会決議がない」「前例がない」「会社が支払拒否している」これらはいずれも、役員退職慰労金を回収できない理由ではありません。同族会社・非上場会社・オーナー会社、経営権争いが生じている会社、M&A後に支配構造が変わった会社であっても同様です。役員の解任・強制辞任・任期途中退任など、退任態様を理由に役員退職慰労金の支払を拒否された案件であっても、まったく諦める必要はありません。
理由は、役員退職慰労金を「お願い」ではなく、法的請求として成立させる構成を組み立てているからです。実務上は、形式的な規程や株主総会決議の有無ではなく、実質的に支給すべき状態であったかが判断の核心になります。
役員就任時・退任時の説明や運用から、支給が前提と評価できる場合
役員報酬設計や退任条件から、対価性が認められる場合
役員の解任・強制辞任時の協議経緯から、合意又は合意に準ずる事情がある場合
議事録・社内文書・メール等から、支給方針や算定前提が読み取れる場合
支払拒否が著しく不合理で、信義則違反等と評価できる場合
各種資料や各種状況から実質的に支給すべきと評価される状況に持ち込み、役員退職慰労金を徹底回収します。「株主総会決議がない」と言われて止まっている段階でも、直ちに諦める必要はありません。
事例1理由のない解任と不支給
ご相談者
このたび社長を理由もなく不当に解任され、役員退職慰労金も支払ってもらえません。全く納得ができません。これまでの退任取締役には全員、役員退職慰労金を支給してきましたが、私にだけ役員退職慰労金を支払わないのです。
弁護士から
本当に納得のいかない話だと思います。オーナーの身勝手としか言いようがありません。しかし、諦める必要はないと思います。
事例2M&A後に買主が支払を拒否
ご相談者
M&Aで会社を売却しました。その後、1年間は顧問として事業の引継ぎに尽力してきましたが、もうそろそろその1年も終わりです。しかし、買主のオーナーがいきなり役員退職慰労金を支払わないと通告してきました。役員退職慰労金を払ってもらう約束だったのにですよ。最近、会社の業績が良くないことが気に入らないようです。
しかし、会社の業績が良くないのは、買主のオーナーが経営能力が低いことが原因です。そもそも、役員退職慰労金は会社の業績は関係がないはずです。役員退職慰労金規程も存在しています。買主のオーナーはあまりにも身勝手です。
弁護士から
本当に身勝手ですね。自分の経営能力が低いことを棚に上げ、役員退職慰労金の支払を免れようとする経営者は少なくありません。しかし、そのようなことが許されてよいはずはありません。一緒に頑張りましょう。
事例3後継者として招かれた後の解任
ご相談者
後継者になってほしいというので、上場会社を退職してまで、会社の社長を引き受けたのですが、このたび社長を理由もなく不当に解任され、役員退職慰労金も支払ってもらえません。全く納得ができません。こんなことなら上場会社を退職しなければよかった。
弁護士から
本当に納得のいかない話だと思います。オーナーの身勝手としか言いようがありません。しかし、諦める必要はないと思います。
事例4株主の反乱で会社を追われた
ご相談者
これまで代々、ファミリーが社長をやってきたのに、今回突然、他の株主の反乱がおこり、ファミリーである私は社長に選任されなかったのみならず、役員退職慰労金もなく会社を放り出されました。
この会社の経営を行ってきたのは我々ファミリーなのです。株主は、経営に関与せず、配当だけもらっていたに過ぎません。そのような株主が会社を牛耳ることには納得がいきません。役員退職慰労金を支払ってもらえないものでしょうか。
弁護士から
本当に納得のいかない話だと思います。お金に目の眩んだ株主は問題が大きいですね。しかし、諦める必要は全くないと思います。さらに、そのような株主こそ追い出して、会社の経営権を取り戻すべきです。一緒に頑張りましょう。
事例5経営再建の後に追い出された
ご相談者
経営不振に陥った会社を支援して欲しいというので、清水の舞台から飛び降りた思いで、火中の栗を拾いました。しかし、いざ、経営再建が進んでくると、オーナーが手のひらを返し、会社から私を追い出したのです。
会社を潰しそうになったのはそのオーナーであり、そのような会社を今の正常な状態に持って行ったのは私ですよ。役員退職慰労金の支給もないというのは納得いきません。しかも、オーナーは、私が不正をしたといって、会社を使って裁判を仕掛けてきています。
弁護士から
本当に納得のいかない話だと思います。オーナーの身勝手には呆れるばかりです。しかし、諦める必要はないと思います。一緒に頑張りましょう。
事例6兄による解任と不支給
ご相談者
20年間、社長として会社を経営してきました。兄は、私より多く非上場株式を持っていましたが、ろくに会社の経営に関与せず、株式投資や不動産投資にはまり、会社に巨額の損失を被らせました。
兄だからと言って、目をつむっていたのですが、この度いきなり、社長を解任されました。兄としては、私から何か責任追及されることを危惧したのかもしれません。
兄は、会社の経営に関与していませんので、会社の経営などできるはずがありません。また、のらりくらり言って役員退職慰労金を全く払おうとしません。
弁護士から
本当に納得のいかない話だと思います。兄の身勝手さには呆れるばかりか怒りさえ感じます。しかし、諦める必要はないと思います。その会社の非上場株式もお持ちなのではないでしょうか。一括解決を目指して、一緒に頑張りましょう。
代表弁護士 土屋勝裕弁護士法人M&A総合法律事務所/東京弁護士会
弁護士法人M&A総合法律事務所では、役員退職慰労金の回収案件を多数取り扱っており、会社から支払拒否された役員退職慰労金を回収してきた実績が非常に多くあります。役員退職慰労金は、売掛金や未払金と同様、回収の対象となる金銭債権です。
企業法務事件で培った紛争実務と、ファイナンス理論・企業価値評価・交渉実務を踏まえ、支払拒否を崩す論点と資料の積み上げを熟知しています。
役員退職慰労金の未払い・減額について、回収(請求)を検討する案件の弁護士費用は、弁護士費用一覧ページに整理しています。まずは費用の目安を確認し、交渉で進めるべき局面か、法的手続を選択すべき局面かを判断してください。「費用の見通し」を先に固めることで、次の一手が決まります。
役員退職慰労金の弁護士費用を確認する決議がないことだけで諦める必要はありません。支給規程、過去の支給の実例、就任の時の説明などから、請求の根拠を組み立てられる場合があります。
前例がなくても、合意の内容、取締役会の決議、社内の資料から請求できる場合があります。資料を拝見して見通しをご説明します。
まず会社に開示を求めます。応じない場合は、訴訟の中で提出を求める手続を検討します。
資金がないことだけで、支払の義務がなくなるわけではありません。分割での支払の交渉や、財産の保全を検討します。
正当な理由のない解任であれば、役員退職慰労金とは別に、損害賠償を請求できる場合があります。両方の請求の組み立て方を最初に検討します。
消滅時効が問題となりますので、お早めにご相談ください。時効の起算点の考え方によっては、なお請求できる場合があります。
「退任にあたって役員退職慰労金はいくらもらえるのか」「会社から役員退職慰労金を支払わないと言われたが、どうすればよいのか」――役員退職慰労金をめぐるこうした疑問やトラブルは、決して珍しいものではありません。
役員退職慰労金は、取締役や監査役が退任する際に支給される金銭です。従業員の退職金と混同されがちですが、法的性質も決定方法も異なります。特に、定款の定めや適法な決議がなければ、原則として具体的な請求権が発生しないという点は、多くの方が見落としがちなポイントです。
本記事では、役員退職慰労金の基本的な仕組みから、功績倍率法を用いた計算方法、退職所得としての税務処理、支給の手続きまでを体系的に解説します。さらに、役員退職慰労金が支払われないケースや不当に減額された場合の対処法について、近時の最高裁判例も踏まえながら詳しく取り上げます。
役員退職慰労金の計算方法や手続きを正しく理解しておくことは、支払拒否に遭った場合に自分の請求が正当であることを裏付けるための土台になります。役員退職慰労金の受給に不安を感じている方、あるいはすでにトラブルを抱えている方は、ぜひお読みください。
役員退職慰労金とは、取締役や監査役などの役員が退任する際に、在任中の職務執行の対価ないし功労に対する給付として会社から支給される金銭をいいます。法律上の独立した定義規定はありませんが、一般の株式会社では、取締役の役員退職慰労金は会社法361条1項の「報酬等」、監査役の役員退職慰労金は会社法387条1項の「報酬等」に含まれると解されています。そのため、定款に定めがない限り、原則として株主総会の決議が必要です。なお、指名委員会等設置会社では、報酬委員会が個人別の報酬等の内容を決定します。
従業員の退職金との大きな違いは、会社と役員の間の法律関係にあります。従業員は雇用契約に基づいて会社に雇われていますが、役員は委任関係に基づいて会社の経営を担う立場です。この違いが、役員退職慰労金の支給要件や手続きに大きく影響します。
役員退職慰労金は、在任中の職務執行の対価としての性質と、功労に報いる性質をあわせ持つ給付と説明されています。取締役については会社法361条1項、監査役については会社法387条1項の「報酬等」に含まれると解されており、定款又は適法な決議がない限り、具体的な請求権は発生しません。
この「報酬等」に当たるという点が重要です。定款に定めがない場合、役員退職慰労金については株主総会の決議を要し、具体的な金額や支給時期等の決定を取締役会に委ねる場合にも、株主総会の決議から支給基準を推知できることが必要です。株主総会で基準を示さないまま、具体額の決定を無条件に取締役会や代表取締役へ委ねることはできません。
このような規律が設けられているのは、役員自らが自己の報酬を恣意的に決めることを防ぎ、会社と株主の利益を保護するためです。役員退職慰労金は退任時に一括で支払われることが多いため、通常の月額報酬以上に透明性と手続の適正さが求められます。
役員退職慰労金と従業員の退職金は、主に次の3点で異なります。
第一に、決定方法が違います。従業員の退職金は、多くの場合、就業規則や退職金規程に基づいて算定されます。一方、役員退職慰労金は、定款の定め又は株主総会の決議が必要であり、取締役については株主総会決議とその委任に基づく取締役会決議、監査役については株主総会決議と監査役間の協議などを経て具体化されます。
第二に、請求権の発生要件が違います。従業員は退職金規程の要件を満たせば請求権を取得するのが通常ですが、役員は定款の定めや株主総会決議などを経て初めて具体的な請求権が確定します。役員役員退職慰労金規程が社内に存在していても、それだけで当然に会社へ請求できるとは限りません。
第三に、社会保険料の取扱いが異なります。通常の退職金や役員退職慰労金は、いずれも原則として健康保険・厚生年金保険の「報酬等」には当たらず、社会保険料の算定対象にはなりません。ただし、退職金を毎月の給与や賞与に上乗せして前払いするような場合には、「報酬等」に該当することがあります。なお、税務上は、一定の要件を満たす限り、従業員の退職金も役員退職慰労金も退職所得として扱われます。
役員退職慰労金には、支給する法人側と受け取る役員側の双方に利点がある一方、無視できない注意点もあります。退任役員の立場からは、会社側にどのような利点があるかを知っておくことが、支払拒否に対する反論の材料にもなります。
役員退職慰労金は、支給する会社にとっても税務上の利点がある制度です。法人が支給した役員退職慰労金は、適正額の範囲で損金算入の対象となり、課税所得を圧縮できます。また、通常は社会保険料の算定対象にもならないため、法人側の負担を抑えられる面があります。
こうした利点があるにもかかわらず役員退職慰労金の支払いを拒否してくる会社は、税務上の損失を自ら受け入れてでも支払いたくないという意思表示をしていることになります。また、同族会社や非上場会社では、オーナー経営者の引退に伴う資金移転の方法として役員退職慰労金が活用されることが少なくありません。
役員退職慰労金を受け取る役員にとっては、税制面で一定の優遇があります。退職所得には退職所得控除が適用され、原則として控除後の金額の2分の1が課税対象となります。ただし、役員等としての勤続年数が5年以下である者に支払われる「特定役員退職手当等」については、この2分の1計算は適用されません。給与所得や事業所得に比べて税負担が軽くなる場合が多いものの、勤続年数や支給方法によって取扱いが異なる点に注意が必要です。
さらに、退職所得は原則として他の所得と区分して課税されるため、多額の報酬を受けていた役員であっても、退任時の手取りを確保しやすいという特徴があります。老後資金や事業承継後の生活資金を準備する観点からも、役員退職慰労金は重要な意味を持ちます。
法人にとっては、役員退職慰労金の支給が資金繰りを圧迫する可能性があります。特に中小企業では、数千万円規模の役員退職慰労金を一括で支払うことが財務上の重荷になることがあります。
また、株主総会での決議が必要になるため、株主構成によっては議案が否決されるおそれもあります。株主間で対立がある場合や、退任役員と残存役員の関係が悪化している場合には、決議が紛糾し、役員退職慰労金が支払われないという事態に発展することもあります。
役員側にとっても、会社の規程、株主構成、過去の支給慣行によって受給の見通しが大きく左右されます。「長年会社に尽くしたのだから当然にもらえるはずだ」と考えていても、法的には直ちに請求できない場面があるため、退任前から支給の根拠を確認しておくことが大切です。もし退任後に支払拒否を受けた場合でも、規程の有無、過去の慣行、就任時の説明などの事情次第では請求の余地がありますので、早い段階で弁護士に相談することをお勧めします。
役員退職慰労金の金額を算定する方法には、主に「功績倍率法」と「1年当たり平均額法」があります。多くの会社で採用されているのは功績倍率法です。計算式自体は比較的分かりやすいものの、功績倍率の設定や功労加算の有無によって最終的な金額は大きく変わります。役員退職慰労金の支払拒否や減額に遭った場合、自分が本来受け取るべき金額の目安を把握しておくことは、交渉や請求において大きな意味を持ちます。
功績倍率法の基本的な計算式は、次のとおりです。
役員退職慰労金 = 退任時の最終月額報酬 × 役員在任年数 × 功績倍率
たとえば、最終月額報酬が100万円、在任年数が20年、功績倍率が3.0の場合、役員退職慰労金は100万円×20年×3.0=6,000万円と算定されます。功績倍率が2.4であれば4,800万円、2.2であれば4,400万円となり、倍率設定によって最終額が大きく変わります。
功績倍率法は、最終月額報酬と在任年数という客観的な要素を基礎にしつつ、役職や功績を功績倍率に反映させる考え方です。そのため、同じ在任年数でも、代表取締役と平取締役では支給額に大きな差が生じることがあります。
功績倍率は各社が自由に設定できるものの、税務上の適正性が問われるため、同業種・同規模の他法人における支給水準との比較が重要になります。
古くから税務実務や過去の裁判例で参考にされてきた目安値として、「社長3.0、専務2.4、常務2.2、平取締役1.8、監査役1.6」という数値が挙げられます。現在でも裁判や税務調査の議論で引き合いに出されることがありますが、これらは法律上の基準ではなく、あくまで一例です。
一方で、実際の中小企業における設定値は、この古典的な目安よりも低めに運用されている傾向があります。中小企業を対象とした一部の調査では、役職別の功績倍率について次のような水準が示されています。
従業員規模によっても差があり、51名以上の企業では50名以下の企業より倍率がやや高めに設定される傾向があります。適正な倍率は、会社の規模、業種、役員の貢献度、退職の事情、同業類似法人の支給状況を踏まえて判断する必要があります。
役員退職慰労金を減額された場合や、提示された金額に納得がいかない場合は、こうした相場を手がかりに、本来受け取れるはずの金額を検証することができます。会社側が示した功績倍率が合理的な根拠なく低く設定されているのであれば、その不当性を指摘する材料になります。
功労加算とは、会社の業績向上や経営の安定化に特に大きく貢献した役員に対して、基本の役員退職慰労金に上乗せして支給する金額です。創業者である代表取締役や、経営危機の局面で会社を支えた役員などに対して検討されることがあります。
功労加算の計算式としては、次のような形が規程例で採用されていることが多いです。
功労加算金 = 功績倍率法により算定した役員退職慰労金 × 30%以内
この30%という割合は、法令上の上限ではなく、役員役員退職慰労金規程の定めや慣行上よく用いられる目安です。たとえば、功績倍率法によって算定した役員退職慰労金が6,000万円であれば、功労加算金は1,800万円以内(6,000万円×30%)が一つの目安になります。
ただし、法令上の上限や一律の相場が定められているわけではなく、規程例の中には上限割合を定めないものもあります。税務上は功労加算を含めた総額の相当性が厳しく見られるため、加算部分に客観的な根拠が乏しい場合には、過大な役員退職給与として損金算入が否認されるおそれがあります。
功労加算を行う場合は、役員役員退職慰労金規程に加算の要件、判断要素、決定機関を明記しておくことが重要です。どのような功績をどの資料に基づいて評価したのかを、株主総会議事録や取締役会議事録等に残しておかなければ、後日に説明が難しくなります。退任役員の立場からは、自分が功労加算の対象になり得る功績を挙げてきたのに、それが計算に反映されていない場合、加算分も含めた請求を検討する余地があります。
1年当たり平均額法は、次の計算式で役員退職慰労金を算定する方法です。
役員退職慰労金 = 類似法人の役位別1年当たり平均退職金額 × 役員在任年数
この方法は、自社の最終月額報酬が低い場合や、功績倍率の設定だけでは妥当性の説明が難しい場合に、補充的に用いられることがあります。ただし、「類似法人」のデータを把握することが容易ではないため、功績倍率法に比べると利用の機会は限られます。
会社が功績倍率法で算定した金額が著しく低い場合に、1年当たり平均額法による試算を対置して金額の不当性を指摘するという使い方もあり得ます。どの算定方法を採用するにしても、後から合理性を説明できるかどうかが重要なポイントになります。
役員退職慰労金の受け取り方には、大きく分けて「一時金形式」「年金形式」「分割形式」の3つがあります。いずれの方法を選択するかによって、税務上の取扱い、受給者の手取り額、会社側の資金負担が変わってきます。退任前の段階で、どの形式で受け取るのが自分にとって有利かを検討しておくことが大切です。
一時金形式は、退職時に役員退職慰労金の全額を一括で受け取る方法です。受け取った金額は所得税法上の退職所得として扱われ、後述する退職所得控除の適用や2分の1計算などによって税負担が比較的軽く抑えられるのが特徴です。他の所得と分離して課税される点もメリットです。
ただし、高額の役員退職慰労金を支給する場合、会社側の資金繰りに大きな負担がかかる点には注意が必要です。
年金形式は、役員退職慰労金を一定期間にわたって年金として受け取る方法です。所得税法上は雑所得として扱われ、公的年金等控除の対象になる場合があります。
一時金形式と比べると税負担が重くなる傾向があり、受給期間中は毎年課税の対象となります。また、受取額が国民健康保険料や介護保険料の算定に反映されるため、社会保険料の負担が増えることもあります。他方で、規程上、未払残高に据置利率(予定利率)を付すことが定められている場合には、その分が上乗せされる可能性もあります。ただし、税負担が増える点と合わせて、総額で有利になるかは個別に試算が必要です。
分割形式は、高額の役員退職慰労金を一度に支払うことが難しい会社で用いられる方法です。税務上、一時金形式と同様に退職所得として扱われるためには、次のような要件を満たす必要があります。
これらの要件を満たしていれば退職所得控除を受けることができ、税制上の取扱いは一時金形式と変わりません。一方で、分割期間が長すぎたり、合理的な理由が示せなかったりした場合には、各支給額が退職所得として認められず、税務上の取扱いが不利になるおそれがあります。
会社の提示する受取方法が、本来受給者にとって有利な方法と異なる場合があります。たとえば、一時金での支給が本来予定されていたにもかかわらず、「資金繰りが厳しい」として分割形式を一方的に提示される場面が見られます。
分割形式への変更自体は必ずしも違法ではありませんが、株主総会決議の内容や役員役員退職慰労金規程の定めに反する一方的な変更は、法的に争える場合があります。また、分割期間が不当に長く設定されると、年金形式と同視されて税務上の不利益が生じる懸念もあります。受取方法について会社側の提案に納得がいかない場合は、早めに弁護士にご相談ください。
役員退職慰労金は、所得税法上、原則として「退職所得」に分類されます。退職所得には他の所得と比べて税負担を抑える仕組みが設けられており、これが役員退職慰労金の大きな特徴です。退任役員にとっては、自分が受け取る役員退職慰労金に対してどの程度の税金がかかるのかを把握しておくことが、手取り額の見通しを立てるうえで欠かせません。また、法人側にとっても損金算入の可否が法人税額に直結するため、その要件を理解しておく意味があります。
退職所得の金額は、原則として、次の計算式で算定されます。ただし、役員等勤続年数が5年以下の者に支払われる特定役員退職手当等については、この2分の1計算は適用されません。
退職所得 =(役員退職慰労金の額 - 退職所得控除額)× 1/2
退職所得控除額は、役員等勤続年数に応じて異なります。勤続年数が20年以下の場合は「40万円×勤続年数」(最低80万円)、20年を超える場合は「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」で計算します。
退職所得の金額が確定したら、その金額に応じた所得税率を適用して所得税額を算出します。計算式は次のとおりです。
所得税額 = 退職所得金額 × 所得税率 - 控除額
適用される税率と控除額は、退職所得金額の区分ごとに次のように定められています(2026年4月時点の現行税率)。
| 退職所得金額 | 所得税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000円〜194万9,000円 | 5% | 0円 |
| 195万円〜329万9,000円 | 10% | 9万7,500円 |
| 330万円〜694万9,000円 | 20% | 42万7,500円 |
| 695万円〜899万9,000円 | 23% | 63万6,000円 |
| 900万円〜1,799万9,000円 | 33% | 153万6,000円 |
| 1,800万円〜3,999万9,000円 | 40% | 279万6,000円 |
| 4,000万円以上 | 45% | 479万6,000円 |
さらに、2037年12月31日までの各年分については、復興特別所得税(所得税額の2.1%)が上乗せされます。
ここまでの計算式をもとに、具体的な数値で手取り額をシミュレーションしてみます。
前提条件
①退職所得控除額の計算
在任年数が20年を超えるため、控除額は次のとおりとなります。
800万円 + 70万円 ×(25年 - 20年)= 1,150万円
②退職所得金額の計算
(7,000万円 - 1,150万円)× 1/2 = 2,925万円
③所得税額の計算
退職所得金額2,925万円は、税率40%・控除額279万6,000円の区分に該当します。
2,925万円 × 40% - 279万6,000円 = 890万4,000円
④復興特別所得税を含めた所得税額
890万4,000円 +(890万4,000円 × 2.1%)≒ 909万984円
この所得税に加えて、退職所得に係る住民税(退職所得金額の10%=道府県民税4%+市町村民税6%)が別途課されます。上記のケースでは約292万5,000円となります。7,000万円の役員退職慰労金のうち、税金として差し引かれるのはおおむね1,200万円前後であり、残りの約5,800万円が手取り額の目安となります。
役員退職慰労金の全額がそのまま課税対象になるわけではなく、退職所得控除と2分の1計算が適用されることで、給与所得として同額を受け取る場合に比べて税負担を大きく抑えられる仕組みになっています。
役員退職慰労金の請求を検討するにあたり、法人側の損金算入の要件を理解しておくことは、交渉上も意味があります。会社が支払いを渋る際に「税務上の問題がある」と主張してくることがありますが、要件を知っていれば、その主張が妥当かどうかを見極めることができます。
法人が支給した役員退職慰労金は、適正な額である限り、損金算入の対象になります。ただし、法人税法34条2項により、不相当に高額な部分は損金不算入とされます。
損金算入の可否を判断する際には、株主総会決議などにより退職金額が具体的に確定していること、退職の事実があること、支給額が同業類似法人と比べて不相当に高額でないことなどが重要になります。もっとも、役員が分掌変更により常勤から非常勤へ移る場合や、報酬がおおむね50%以上減少した場合など、実質的に退職したと認められる事情があるときは、在任中でも退職金として扱われることがあります。
「不相当に高額」と判断されやすい場面としては、次のような事情が挙げられます。
これらの事情に該当すると、税務署から指摘を受け、超過部分の損金算入が否認されるおそれがあります。逆にいえば、こうした事情がないにもかかわらず会社が「税務上の問題がある」と述べて支払いを拒否している場合、その主張の根拠は薄いといえます。
損金算入時期は、原則として、株主総会の決議等によって退職金額が具体的に確定した日の属する事業年度です。ただし、実際に支払った事業年度において損金経理をしたときは、その支払事業年度で損金算入することも認められます。金額が確定する前に未払金へ計上しただけでは、直ちに損金算入できません。
なお、会計上は、役員退職慰労金の支給見込額を毎期見積もって「役員退職慰労引当金」として計上しておくことが一般的です。この引当金は会計上の費用として認識されますが、税務上は損金に算入できないため、企業会計と税務会計の間に一時差異が生じます。回収可能性が認められる場合には、税効果会計を適用して繰延税金資産を計上し、実際の支給時に取り崩す処理をおこないます。具体的な会計処理は、顧問税理士や公認会計士にご確認ください。
つまり、役員退職慰労金を適正な金額で支給することは、会社にとっても法人税の負担を軽減できる合理的な選択肢です。「会社に余裕がない」「税務上の問題がある」といった説明で支払いを拒否された場合は、これらの要件を踏まえて、会社の主張が本当に合理的なものかを検証することが大切です。
役員退職慰労金を受け取る際に「退職所得の受給に関する申告書」を会社へ提出した場合、会社が所定の方法で源泉徴収を行うため、役員退職慰労金については原則として確定申告は不要です。
一方、この申告書を提出しなかった場合は、役員退職慰労金の額に対して20.42%の税率で源泉徴収されます。この場合、正規の税額との差額を精算するために確定申告が必要になります。退職所得控除や、原則として適用される2分の1計算などを正しく反映させるためにも、確定申告を失念しないことが大切です。
役員退職慰労金の支払拒否・減額でお困りの方は、お早めにご相談ください。
役員退職慰労金の支給を受けるためには、会社法に基づく所定の手続きを経る必要があります。手続に不備があると、支給そのものが争われたり、税務上の損金算入に影響が及んだりするおそれがあります。「当然もらえると思っていたのに、手続の問題で支給が止まった」という事態を避けるためにも、全体の流れを理解しておくことが重要です。また、退任役員の立場からは、会社が所定の手続きを適切に履行しているかどうかを検証するための知識にもなります。
役員退職慰労金の支給手続きは、役員の区分によって若干異なりますが、一般的には次の流れで進みます。
まず、会社内部で、退任する役員に役員退職慰労金を支給するかどうか、支給基準をどのように考えるかを検討します。次に、株主総会を開催し、役員退職慰労金の支給に関する議案を上程して決議を得ます。取締役については、その後、株主総会から適法に委任を受けた取締役会で具体的な金額、支給時期、支給方法を決定することがあります。監査役については、株主総会で定められた枠内で、各監査役への配分を監査役の協議で定めるのが通常です。支給の実行後には、税務上の手続きが続きます。
支給後の税務手続きには期限が定められている点に注意が必要です。役員退職慰労金から源泉徴収した所得税と、退職所得に係る住民税(特別徴収分)は、支給日の翌月10日までに納付する必要があります。また、退職所得の源泉徴収票は、退職日から1ヶ月以内に受給者へ交付する必要があります。加えて、役員に対する支給額が250万円を超える場合には、翌年1月31日までに税務署と市区町村へも提出することが求められます。これらの期限を守らない場合、会社側にペナルティが科されることもあります。
この手続の中で最も重要なのは、株主総会の決議です。定款の定めや適法な決議がなければ、原則として役員退職慰労金の具体的な請求権は発生しません。退任後に請求を検討する場合は、自分の役員退職慰労金について株主総会が開催されたのか、どのような決議がされたのかを確認することが、最初に行うべき作業となります。
役員退職慰労金の支給に必要な株主総会決議は、一般に普通決議で足ります。すなわち、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数の賛成があれば可決されます。
株主総会では、支給する金額を直接決議する方法のほか、役員役員退職慰労金規程などの支給基準を示した上で、具体的な金額の決定を取締役会へ一任する方法がとられることがあります。ただし、この一任決議が有効といえるためには、株主が支給基準の内容を推知できる状態にあることが必要です。基準を何も示さないまま、単に「詳細は取締役会に一任する」とするだけでは足りません。
監査役についても、株主総会の関与が必要である点は同じです。ただし、監査役の個々の支給額については、監査役間の協議で定める構成になることが多いため、取締役と同じ手続で考えないよう注意が必要です。
退任役員の立場からは、自分の役員退職慰労金に関する株主総会決議がどのような内容であったか(一任決議か直接決議か、支給基準が示されていたか)を確認することが重要です。一任決議の内容や手続に不備がある場合には、その後の取締役会決議の有効性にも影響が及ぶ可能性があります。
「自社には役員役員退職慰労金規程がないが、過去に退任した役員には慣例で支払ってきた」という会社は少なくありません。しかし、規程がない状態で役員退職慰労金を支給することには、複数のリスクが伴います。
まず、支給の根拠が不透明であるため、退任役員と会社の間で金額をめぐる争いが生じやすくなります。規程がなければ「いくらもらえるのか」が双方にとって不明確であり、期待と現実のずれが紛争の原因になります。
また、株主総会で一任決議を行う際に、株主が支給基準を推知できないとして、決議の有効性が争われるおそれもあります。さらに、税務上も、支給基準が不明確なまま恣意的に金額を決めたとみられれば、損金算入を否認されるリスクが高まります。
ただし、「規程がない=役員退職慰労金を一切請求できない」という意味ではありません。過去の支給慣行、就任時や退任時の説明、支給を前提とした会計処理、株主構成などによっては、会社側の不支給主張や関係者の責任が争点となることがあります。規程がないことを理由に一方的に支払いを拒否された場合でも、それだけで諦める必要はありません。規程がない事案ほど、個別の事情と証拠の確認が重要であり、弁護士への相談をお勧めします。
近年、役員退職慰労金制度を廃止する企業が増えています。退任役員にとって注意すべきなのは、この「制度廃止」を理由に役員退職慰労金の支払いを拒否されるケースがあるという点です。廃止の背景には企業統治の強化や報酬の透明性に対する要請がありますが、廃止されたからといって、廃止前の在任期間に対応する役員退職慰労金まで当然に消滅するわけではありません。
上場企業では、2000年代以降、役員退職慰労金制度を見直す動きが広がってきました。近年は、コーポレートガバナンス・コードの定着や役員報酬開示の充実を背景に、退任時の一時金よりも、在任中の固定報酬、業績連動報酬、株式報酬の組合せを重視する会社が増えています。
背景には、報酬と企業価値との連動性や、株主に対する説明可能性を高めようとする要請があります。役員退職慰労金は、在任中の業績との関係や算定根拠を個別に説明しにくい場面があるため、上場会社では、短期の賞与や中長期の株式報酬へ配分を移す動きがみられます。
上場企業で見直しが進む一方、非上場の中小企業では役員退職慰労金制度を維持している会社が多く存在します。これは、中小企業にとって役員退職慰労金が持つ利点がなお大きいためです。
役員退職慰労金は、一定の要件を満たせば退職所得として扱われ、退職所得控除や、原則として2分の1計算の適用を受けます。もっとも、役員等としての勤続年数が5年以下である場合など、2分の1計算が適用されない例外もあります。法人側でも、支給額が不相当に高額でない限り損金算入の余地があり、通常は社会保険料の算定対象にもなりません。そのため、企業統治上の説明責任が比較的問題になりにくい非上場会社では、なお活用される場面があります。
さらに、同族会社やオーナー企業では、役員の退任と事業承継が密接に結び付くことが少なくありません。長年会社を支えてきた経営者に対する退職時の処遇として、役員退職慰労金制度が分かりやすく機能する場合もあります。
役員退職慰労金制度を廃止する場合に特に注意したいのは、在職中の役員に対する打切支給の税務上の取扱いです。
制度廃止に伴い、引き続き在職する役員に対して役員退職慰労金相当額をその場で支払うと、その支給が退職所得ではなく給与所得として扱われることがあります。退職所得であれば退職所得控除や2分の1計算の恩恵を受けられますが、給与所得になると課税関係が大きく変わります。
この問題を避けるためには、制度廃止の時点で直ちに現金を支給するのではなく、廃止日までの在任期間に対応する支給見込額を株主総会で決議した上で、実際の退任時まで留保する方法が検討されます。打切支給としてその場で支払えば給与所得と扱われ得る一方、退任時まで留保した未払金等については、退任時の退職所得として処理できる余地があります。
退任役員の立場からは、制度廃止の際に会社がどのような手続きを踏んだか(株主総会決議の有無、留保か打切支給か、会計上の処理)を確認することが重要です。制度廃止を理由に一切の役員退職慰労金を支払わないという対応が許されるとは限りません。会社の対応に疑問がある場合は、弁護士に相談されることをお勧めします。
ここからは、役員退職慰労金をめぐるトラブルの中でも、特に深刻な「支払われない」ケースについて解説します。「長年会社に尽くしてきたのに、役員退職慰労金がもらえない」という状況は、退任役員にとって経済的にも精神的にも大きな打撃です。しかし、一見すると受け取れないように見える事案でも、会社の規程、株主構成、過去の支給実績、退任時のやり取りなどによって、法的な評価が変わることがあります。
役員退職慰労金が支払われない場面は、おおむね次の5つに分けて考えることができます。ご自身の状況がどの場面に近いのかを確認してみてください。
会社に役員役員退職慰労金規程や役員委任契約上の取り決めが存在しない場合、会社側は「制度がないから支払えない」と主張してくることがあります。しかし、それだけで直ちに結論が決まるわけではありません。過去に退任した役員へ慣行的に支給していた場合や、就任時又は退任時に会社側から支給を前提とする説明がされていた場合には、その経緯が請求を検討するうえで重要な意味を持ちます。
株主総会で役員退職慰労金を支給しないとの決議がされた場合、形式的には退任役員の請求権は発生しないのが原則です。しかし、就任時や退任時の説明、支配株主や代表者の関与の態様、過去の支給慣行などによっては、不支給決議の合理性が問われる場合があります。また、会社に対する直接の請求が認められなくても、不支給を主導した関係者の責任が争点になることがあります。
株主総会で「役員役員退職慰労金規程に従い取締役会に一任する」との決議がされたにもかかわらず、取締役会が規程の趣旨に反して大幅な減額を決定することがあります。取締役会には一定の裁量が認められますが、その判断が株主総会の委任の趣旨に照らして不合理であれば、裁量権の逸脱又は濫用が問題になります。減額後の金額と本来の基準額の差額について、損害賠償を請求できる可能性があります。
正当な理由なく任期途中で解任された場合、会社法339条2項に基づき、解任によって生じた損害の賠償を会社に請求できる可能性があります。このとき問題となるのは、残任期間中の役員報酬だけではありません。事案によっては、任期満了時に支給を受けられた蓋然性が高い役員退職慰労金相当額も争点になります。
代表取締役や支配株主が事実上すべてを決めている会社では、形式的な株主総会や取締役会が開催されないことがあります。そのような会社では、「株主総会の決議がないから請求権がない」という形式論が持ち出されやすくなります。
もっとも、ワンマン会社では、形式的な決議の不存在だけで直ちに結論が決まるわけではありません。支配株主や代表取締役の関与の程度、支給を前提とした通知や会計処理の有無、過去の支給慣行などによっては、会社側の不支給主張や関係者の責任が争点となります。
原則として、定款の定め又は株主総会決議がなければ、役員退職慰労金の具体的な請求権は発生しません。もっとも、訴訟では、全株主の同意があったか、株主総会決議に代わる実質があったか、会社側が支給を前提とする言動を重ねた結果として不支給主張が信義則に反しないかなど、例外的な事情が争点になることがあります。
たとえば、全株主の同意が認められる場合には、株主総会の決議があった場合と同視し得ると考えられています。また、役員退職慰労金の支給を前提とする社内規程、過去の支給経緯、会社側の説明、会計処理などが存在する事案では、会社側の不支給主張や返還請求の可否が争われた裁判例があります。
もっとも、これらは直ちに「株主総会決議がなくても会社に対する請求が常に認められる」ことを意味するものではありません。どの法的構成で請求又は抗弁を組み立てるかによって結論は大きく異なり、会社に対する直接請求が認められる場合もあれば、支配株主や関係者の不法行為責任、信義則違反、権利濫用の成否が中心的な争点になる場合もあります。
そのため、株主総会決議がない事案では、規程の有無だけで結論を出さず、株主構成、過去の支給実績、就任時や退任時の説明、議事録、内容証明、決算書の記載などの証拠を丁寧に確認することが重要です。「株主総会決議がない」と言われた段階で諦めるのではなく、個別の事情を弁護士とともに精査することが、役員退職慰労金の回収に向けた第一歩になります。
取締役の解任は、株主総会の普通決議によっていつでも行うことができます。しかし、「いつでも役員を解任できる」ことと、「役員を解任しても何らの責任を負わない」ことは同じではありません。正当な理由のない役員の解任については、会社は役員の解任によって生じた損害を賠償する義務を負います。
損害賠償の中心になるのは、解任されなければ任期満了まで受け取れたはずの役員報酬です。もっとも、それにとどまらず、任期満了時に役員退職慰労金の支給を受けられた蓋然性が高い場合には、役員退職慰労金相当額が争点になることもあります。どこまでが損害として認められるかは、規程の内容、過去の支給慣行、株主構成、任期の残り、役員の解任の経緯などによって左右されます。
「正当な理由」が認められるかどうかは、個別事情に応じて判断されます。法令違反や著しい職務懈怠が問題になる場合もありますが、単なる経営方針の対立や人間関係の悪化だけでは、直ちに正当な理由があるとはいえないことがあります。不当解任と役員退職慰労金の不支給が重なった場合は、請求額が大きくなることもあるため、弁護士と連携して慎重に対応を検討すべきです。
役員退職慰労金の減額をめぐる重要判例として、最高裁令和6年7月8日判決があります。
この事件では、元代表取締役の役員退職慰労金について、内規に基づく基準額が約3億7720万円と算定されましたが、取締役会は、在任中の行為が会社に重大な害を与えたとして、減額規定を適用し、5700万円に減額する決議をしました。
最高裁は、株主総会の委任を受けた取締役会には一定の裁量があるものの、その判断が株主総会の委任の趣旨に照らして不合理である場合に限り、裁量権の逸脱又は濫用が問題になると示しました。その上で、本件では、利害関係のない弁護士等で構成された調査委員会の報告を踏まえ、取締役会で相当程度の実質的審議が行われていたことなどから、5700万円とした判断は不合理ではないとしました。
この判決は、内規に減額条項があり、調査や審議の手続も整っている場合には、取締役会の減額判断が有効とされ得ることを示したものです。他方で、減額理由が不明確であったり、手続が不十分であったりする事案まで当然に正当化するものではありません。減額の有効性は、規程の文言、事実認定、調査過程、取締役会の審議内容を踏まえて判断されます。
役員退職慰労金を不当に減額された場合は、減額の理由、内規の内容、手続の適正さなどを弁護士とともに精査し、請求の可否を検討してください。
役員退職慰労金の基本的な仕組みから計算方法、税務上の取扱い、支給手続き、そして支払われない場合の対処法までを解説してきました。役員退職慰労金の計算方法や手続きを理解しておくことは、支払拒否に対して自分の請求が正当であることを主張するための土台になります。
役員退職慰労金をめぐる問題は、退任役員の生活基盤に直結する重大な問題です。役員退職慰労金が支払われない場合でも、事実関係や法的構成によっては請求や反論が認められる余地があります。「もう手遅れかもしれない」と感じている方も、まずは弁護士に事情を伝えることが解決への第一歩です。
以下のような状況にある場合は、弁護士への相談を検討してください。
1つ目は、役員退職慰労金を支払ってもらえない、または不当に減額されたケースです。株主総会で不支給となった場合や、取締役会で大幅に減額された場合でも、手続の適法性や裁量権の逸脱が争点になることがあります。「株主総会決議がない」「規程がない」と言われただけで諦める必要はありません。
2つ目は、正当な理由なく役員を解任され、損害賠償請求を検討しているケースです。会社法339条2項に基づく損害賠償では、残任期間中の役員報酬が中心的な問題になりますが、事案によっては、任期満了時に支給を受けられた蓋然性が高い役員退職慰労金相当額も争点になります。
3つ目は、会社の支配権争いや親族間の対立に巻き込まれ、役員退職慰労金が交渉材料にされているケースです。同族企業における相続や株主間紛争の中で退任を迫られた場合、役員退職慰労金の問題が他の紛争と連動していることが少なくありません。このような事案では、役員退職慰労金だけを切り離して考えるのではなく、関連する法的問題を一体として見ていく必要があります。
本ページの記載は、一般的な法制度と当事務所の取扱いの説明であり、個別の事案について一定の結果を保証するものではありません。見通し、要する期間、金額その他の帰結は、事案ごとの事実関係と資料によって異なります。